書評 book review 「セントラルドグマ」 2007 3 4

書名 生命のセントラルドグマ
著者 武村 政春
出版社 講談社ブルーバックス

 この本のタイトルを見た人は、はたして、どう思うでしょうか。
生命科学に興味がある人は、すぐピンとくるタイトルですが(業界用語?)、
一般の人は、どう思うでしょうか。
 ドグマ(dogma)という言葉は、日本人にとって、
なじみのない言葉かもしれません。
この言葉は、キリスト教圏の人たちには、なじみのある言葉でしょう。
 ドグマとは、宗教上の中心的な教義をイメージするでしょう。
あえて、日本語に訳するならば、「金科玉条」でしょうか。
「(金玉の科条(法律)の意)最も大切にして守らなければならない法律または規則(広辞苑)」。
いずれにせよ、現代の日本人には、なじみにくい言葉かもしれません。
 なぜならば、日本神道という宗教には、
儀式はあっても、教義はないと言われます。
外国人が、それを聞くと、驚くでしょうが、
それが、日本において、宗教的な平和を維持することができたと言えるでしょう。
 仏教伝来で、教義の部分は、仏教が代行し、
キリスト教伝道で、キリスト教も、教義の部分を代行する。
こうして、日本においては、重層信仰が確立したと言えるでしょう。
 話がそれました。
この本のタイトルは、「生命のメインストリーム」とした方が、
日本人には、わかりやすかったと思います。
 この本は、科学書の中では、最も、わかりやすい文章でしょう。
たいていの科学書は、教えようとする熱意は十分伝わってくるが、
とにかく難解な文章が多いのです。
 たいていの科学者は、国語が苦手?、文章表現法など大学で履修しませんので、
「何回読んでも難解」のような文章を書くものです。
 しかし、この本の著者は、まるで文科系のような、国語教師のような、
平明で、わかりやすい文章を書くと言えます。
これならば、科学書だけでなく、エッセイを書いても売れるでしょう。
 さて、残念なのは、本の内容が、一般の人向けでないことです。
ある程度、「ゲノム、DNA、RNA」を理解している人向けと言えるでしょう。
大学生で、生命科学に興味がある人には、ちょうどよいと思います。

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